1、海外における税理士制度
日本には税理士という資格、公認会計士という資格、2つの資格があります。
そして両者は一般的に仲が悪いと言われています。
資格制度について政治が改正を行おうとすると、日本税理士会連合会と日本公認会計士協会が
それぞれの立場から少しでも有利な改正にしてもらおうと激しい綱引きを演じているようです。
ところで日本公認会計士協会に限らず、税理士制度を攻撃する方々の論拠の一つが
「海外には税理士制度がない」というものです。
確かに欧米のほとんどの国では会計士が税理士の役割も兼ねていて、独立して税理士という
制度はありません(例外的にドイツはほぼ日本と似たような税理士制度があります)。
欧米以外でも日本の税理士に類似した制度があるのは中国、韓国、オーストラリアだけと言われています。
簡単に各国の制度を概観してみましょう。
2、中国の制度
中国には税務師という制度があります。
税務師事務所は約2,000社です。「社」というのは中国では個人事務所が認められず、
すべて法人としなければならないためです。
ちなみに日本では個人事務所が大半であり、平成13年に制度化された税理士法人は少しづつ
増えてはいますがまだまだ少数派ですね。
さて人口1億の日本の税理士が約7万人、人口10億の中国で税務師事務所が約2,000社というのは
何かの間違いでは?と思います。
これは日本と比較して制度自体が新しく、納税者によく知られていないことが大きな要因と考えられています。
しかし急速に法令整備、システム化が進む同国において、税務師は今後数も増え、
メジャーな存在になっていく可能性があります。
3、韓国の制度
韓国には税務士制度があります(中国は税務師、韓国は税務士)。
創設は1961年ですが、人数はこちらも約8,000名ですから少なく感じられますね。
数を別にすれば、この韓国の制度が最も日本の税理士制度に似ているように感じられます。
例えば国税公務員に対する自動資格付与制度とその問題点、公認会計士との業際問題など・・・
さらに弁護士数が急速に増大する中で、各資格の職域をどうするのかが大問題になっている点も
日本にそっくりです。
4、オーストラリアの制度
オーストラリアの制度「登録税理士」は有償独占を基本としています。
一方、日本の税理士は無償独占が基本になります。
説明しますと、日本ではたとえ無料であっても他人の申告書の作成代行は認められません。
申告書を作成できるのは本人、または税理士に限定されるわけです。
もっとも、家族や友人・知人に作成してもらっている人も多いでしょうが、
日本では一応それは税理士法違反ということになります。
オーストラリアは有償独占ですから、無料つまりボランティアであれば他人の申告書を
作成してもかまわないわけです。
登録税理士制度は1943年の創設ですから、日本の税理士制度とほぼ同じくらいの歴史があるわけですが、
驚くのはその数、約6万人です。
日本の税理士が約7万人、人口が約1/6のオーストラリアに約6万人、但しこれには理由があります。
オーストラリアでは個人は全員確定申告をすることが原則です。
給与所得者の大半が年末調整で会社に手続きをしてもらい、確定申告をすることがない日本と
この点大きく異なります。
さらにその全員確定申告ですが、登録税理士に依頼する割合が8〜9割になるようです。
やはりオーストラリアでも税金、申告は複雑なのでしょうね。
ところでオーストラリアはここまで述べてきた国のなかで唯一の英語圏、従って英語圏で
唯一の税理士制度を持つ国ということになります。
従って弁護士などを中心に、やはり税理士制度に異を唱える向きがあるようです。