1、研修制度
税理士は年間36時間の研修を受けなければなりません。
これは平成13年の税理士法改正で定められたものです。
この36時間の根拠ですが、当時の公認会計士協会の規定を参考にしたものとされています。
日本税理士会連合会は研修受講の呼びかけにあたり、2つの理由を挙げています。
まず、税理士が専門家として業務を行うためには研修を通じて自己研さんに励む必要があるということ。
確かに税理士試験や、日常的な実務で身に付く知識は税金全体のほんの一部分に過ぎません。
お客様にご迷惑をかけないためにもこれは当然の理由と言えるでしょう。
さらに日税連はもう一つの理由として、現在の資格制度には様々な規制改革の動きがあり、
税理士全体がその質を維持・向上しなければ税理士制度そのものも危ういと続けています。
税理士もあらゆる意味で相当な危機意識を持つべきであるということでしょうが、
確かに昨今の弁護士業界、公認会計士業界を見るにつけ、その点に全く同感です。
2、研修の種類
研修にはさまざまなものがありますが、まず税理士として登録すると最初に行われるのが
登録時研修です。
これは3日間行われるもので、
1日目→税理士制度/憲法・行政法
2日目→租税法概論・争訟法
3日目→業務知識/民法、会社法
となっています。
民法と会社法はともかく、憲法や行政法は税理士の業務とはかなり縁遠い感があります。
しかし考え方として、税理士は単なる税金計算業者ではない、税法をメインとする
法律家のはしくれなのだという考え方があるのでしょう。
普通はまずこの登録時研修を受けますが、それ以後の研修は特に順番が定められているわけではありません。
たとえば大阪でも税理士会や支部が主催するものを中心に毎月十数件(もっと多い時もあります)の研修が
行われています。
その詳細は毎月送付されて来る近畿税理士会の会報に載っていますので、そのなかから興味があるもの、
自らの業務に関係しそうなものを選んで参加するわけです。
無料、有料どちらもありますが、有料のものも数千円くらいで参加できます。
素晴らしいのはマルチメディア研修です。
これは日本税理士会連合会のホームページで公開されているものですが、要するに過去の
研修を録画して、それをインターネットで何時でも見られるようにしているものです。
現実の研修を受講しようとすれば、その日の予定を調整する必要があり、研修会場への
往復の時間もかかります。
時間を気にせず何時でも受講できる、これからはこのマルチメディア研修が主流になっていく
可能性も感じさせます。
3、努力義務から強制受講へ
ところで税理士会の会則では、税理士に対して年間36時間以上の研修受講を求めているわけですが
これは努力義務となっています。
年間36時間を割り込んでも、あるいは全く受けなかったとしても何らかのペナルティがあるわけでは
ないのです。
上述の登録時研修も受けないということもあり得ます。
しかしながら近年の高度に複雑化した税制や商取引を鑑みれば税理士が常に自己研さんに励み、
その一環として積極的に研修を受講することはもはや努力義務ではなく、義務であるという声が
大きくなってきました。
ここ1〜2年内にあらためて税理士法の改正が予想されていますが、その改正意見案においては
36時間の研修受講を強制するものとなっています。
この税理士法改正の意見案では他にも税理士証票の更新義務、税理士職業賠償責任保険への加入義務など、
義務の強化が多く盛り込まれています。
これも規制改革に対する税理士会の危機感の表れと言えるでしょう。