1、登録政治資金監査人とは何か
小泉首相退陣後の自民党政権末期時代、親族への家賃支払いや「ナントか還元水」問題など、
政治資金の使途について野党から厳しい追及があり、現職大臣の自殺と言う悲劇も引き起こされたことは
ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。
これを受けて平成19年12月21日に政治資金規正法が改正され、登録政治資金監査人という新しい制度が
導入されることになりました。
これは国会議員に関係する政治団体(約5,000と言われている)について、平成21年分の収支報告書から
登録政治資金監査人の監査を受けなければならないというものです。
そしてこの監査人の有資格者として税理士、公認会計士、弁護士が定められました。
なお税理士であれば自動的に監査人となれるわけではなく、まず総務省に設置されている
政治資金適正化委員会に登録し、その研修を受ける必要があります。
また税理士法人、監査法人など法人による監査人登録は認められず、個人での登録に限定されています。
2、税理士の登録多数
日本税理士会連合会および日本税理士政治連盟はこの登録政治資金監査人制度を
税理士の公益的な貢献活動の一環として、あるいはひとつのビジネスチャンスとして捉え、
監査人の有資格者として弁護士、会計士のほか税理士を認めるよう政府に働きかけました。
そして改正が成立すると、税理士会員に対して積極的に監査人に登録するよう呼びかけました。
その結果、平成23年5月27日時点では総登録者数は3,906人、そのうち税理士が2,983人と約4分の3を占め、
以下公認会計士681人、弁護士242人と続いています。
もともと約5,000の国会議員関係政治団体は地方にも多くあり、いっぽうで弁護士・公認会計士は
どうしても都市部に集中しています。
ですからこの制度は当初から税理士を監査人の中心的役割を担うものとして想定していた面も
あるようです。
一方、約7万人という税理士の総数に比して、約3千人という登録者数は少ないと言えなくもありません。
3、業務の内容
登録政治資金監査人の実際の業務ですが、政治資金収支報告書全体をチェックするわけではなく、
支出について、帳簿と原始帳票を突合するという作業がほぼすべてのようです。
簡単に言えば帳面につけた支出について、そのとおりのレシート・領収書が保管されているか
確認するだけのお仕事ということになります。
もちろんその支出が政治活動に必要なものかどうかなどは判断しません。
これで税理士の職能を生かすことができるかといえばやや疑問です。
極端な話、架空の領収書が山のように混ざっていたとしても帳面とあっていればそれでOK、
これが税務署の税務調査であれば反面調査を行って正当な領収書か否か確かめるわけですが・・・
4、現状と将来
現状ではこの監査人制度は大きく変化しないでしょう。
約5千の国会議員関係政治団体に対して、約4千人の税理士、会計士、弁護士が登録している
訳ですからもはや飽和状態と言えます。
業務の内容上、特定の税理士に仕事が集中することも考えられます。
上述のような単純作業であれば料金をどれくらいに設定するかも難しいところでしょう。
もしこの制度が大きく動くとすれば地方議会議員も対象になったときでしょう。
平成の大合併で減ったとはいえ、その総数はまだ3万数千人です。
そうなれば税理士の大きな業務の柱になる可能性もあります。