インターネットで「税理士 コンサルティング」と検索をかけると
星の数ほどの事務所がヒットします。
多くは職員数が数十名を超える大規模事務所と呼ばれるところですが、
少人数でもコンサルティングを売りものにしている事務所はあります。
コンサルティングと一口に言っても、節税コンサルティング・相続コンサルティングといった
税理士の本来業務と縁の深いものから、経営全般をアドバイスする経営コンサルティングと
呼ばれるものまで様々です。
このような税理士事務所・会計事務所が行っているコンサルティングについて考えてみましょう。
まず節税や相続に関するコンサルティングに関しては問題ないでしょう。
そもそも税理士の専門分野ですから。
これを前面に押し出しているのは単なる広告戦略と言えると思います。
私が違和感を感じるのは税理士事務所が宣伝する経営コンサルティングです。
なぜ一部の税理士事務所が経営コンサルティングを大きく売りものにして宣伝しているのか、
実態に即して言えばそれは以下のような事情があります。
以前から税理士業界は競争の激しい業界でしたが、インターネットの普及はその競争に
拍車をかけました。新規の顧問先獲得はどんどん困難になり、顧問料の相場も大きく低落しています。
特に10年20年以上営業しているような大規模事務所では、
過去の顧問料相場を基礎にして事務所を運営していますから、その危機感は相当です。
いっぽう若手の税理士にとっては独立開業してもなかなか顧問先が増えず、
顧問先を獲得しても年間顧問料は小さく、事務所運営を軌道に乗せるのは容易なことではありません。
そこで税理士が飛びつくのが今流行の「付加価値をつける」というやつです。
従来の税理士業務、つまり経理事務の代行や申告書の作成の対価である顧問料は
すでに相場が形成されていますから単価の下落も顕著です。
ところがこれまで手掛ける事務所が少なかった経営コンサルティングは
対価の算定が困難であり、相場があってないようなものです。
うまく行けば顧問料とは別にその数倍もの金額を顧問先からいただける可能性もあります。
つまり税理士事務所が謳う経営コンサルティングの発想の出発点は
「1件の顧問先からもらえる単価を底上げする」であって、
決して「顧問先をあらゆる角度からサポートする」ではありません。
税理士事務所が雨後の筍のように我も我もとコンサルティングを謳う背景はこんなものです。
発想がどうであれ、経営コンサルティング自体が本当に顧問先の役に立つものであれば
それは正当なものだと思います。
たとえば若手税理士でITに相当詳しく、ちょっとしたプログラムなら組めるような人が
社内のシステム、ホームページ運営やSEO対策のコンサルティングをするのは良いでしょう。
「俺は税理士になる前に10年以上居酒屋を経営していた。居酒屋の経営に関しては
誰にも負けない自信があるぞ!」
もしこんな税理士がいて、居酒屋に関する経営コンサルティングを行い、結果として
お店の売り上げと利益が増大すれば高額なコンサル料を請求して当然でしょう。
こんなケースでは相手先に常駐するか、常駐しないまでも相当の労力を割く必要があると思います。
しかし実際には若手の職員をコンサル養成講座にちょろちょろと行かせたり、
ベテラン職員のうち特定の業界に多少詳しい人をしてはい、コンサルタントの出来上がり、
月に2〜3回こちらの都合で訪問して評論家のようなことをぽつぽつ言うだけ、
それで高額な料金を徴収していればそのうちトラブル頻発になりかねませんよ。
もっともそういう税理士事務所に限ってクレーム防止、トラブル対応には万全のマニュアルが
出来ていたりします。
とは言うものの、私は税理士事務所のコンサルティングを頭から否定するものではありません。
私自身、税務や会計に関する業務だけではなく、顧問先の相談にはできる限り広く対応したい
と考えております。
なかでも借入や資金繰りに関するご相談、ホームページやSEO対策に関するご相談については
それなりの対応ができていると自負しております。
私自身がもと銀行員であること、当事務所がホームページに力を入れていることからノウハウの
蓄積があり、あるものは惜しみなく顧問先のお役に立てたいと思うからです。
(これらに関して別途報酬をいただくことはあまりありません。賛否両論あると思いますが)
なぜ今回、批判的な記事を書いたかと言えば、理由の一つとして、
世間には税理士事務所専門のコンサルティング会社が数件ありますが、
どの会社も判を押したように「これからはコンサル」と書くからです。
これから若い税理士がコンサルティングに力を入れるのであれば、
そんな宣伝に安易に踊らされることなく、自分の強みが何であるのかを
しっかり見極めて、業務の一環としてコンサルティングを磨きあげて
いってほしいと思います。