3、制度の現状
さてこのように税理士会幹部の方々は大喜びした会計参与制度ですが、今のところあまりぱっとしないようです。
税理士会や中小企業庁はこの制度に関して定期的にアンケートを実施しています。
その回答では導入企業の割合が3%〜8%くらいで出ているようですが、これはあくまで有効回答数に占める割合です。
絶対数ではおそらく2,000社(!)程度と推定されています。
ちなみに日本の中小企業は約400万社です。
まず中小企業の経営者でこの制度をご存知の方はどれくらいいらっしゃるでしょうか?
100人のうち1人〜2人といったところではないでしょうか?
別に税理士会が積極的な告知活動をしなくても、本当に中小企業オーナーにとって有用な制度であれば
口コミで、あるいはネットを通じて制度は徐々に知られていくものです。
そうでないと言うことは経営者にとって魅力がないということに他なりません。
金融機関はどうでしょう?
確かに一部の金融機関は会計参与設置会社に対しての金利優遇策などを打ち出しています。
しかし実際にこの制度や優遇策を知っている融資担当者はほとんどいないでしょう。
何といっても数が少なすぎます。このままではせっかくの優遇策などもどんどん打ち切りになって
しまうかもしれません。
かんじんの税理士もこの制度に関する関心が薄れてきています。
税理士会のアンケートでも 「関心がない」 「顧問先から要望されても就任しない」 と回答する税理士の
割合が増加しています。
4、問題点
鳴り物入りでスタートした会計参与制度のどこに問題があったのでしょうか?
一番の問題点は、「顧問税理士と会計参与で何が違うの?」 ということではないでしょうか。
もともと税理士は決算書を社長(代表取締役)と十分な打合せを重ねながら作成するものです。
顧問税理士としてはいい加減な決算書を作るけれども、会計参与になったらきちんと作りますよなどと
言うことはあり得ません。
会社(お客様)は、税法上も会計上も適正な処理を期待して顧問税理士と契約し、顧問料金を
支払いされているはずです。
その上にわざわざ会計参与という仕組みを作り、顧問税理士にそれへ就任してもらうというのは
屋上屋を架すという感覚が拭えません。
この制度の実現に当たり、日本税理士会連合会の後押しがあったことは前述しました。
その根本には中小企業の信頼向上を目指す、税理士の地位向上を目指す、崇高な理念があったと信じたいです。
一方で、税理士に会計参与という武器を与えることで、顧問先からいただく料金を上乗せできるという
期待が一部にあったことも事実です。
そのようにお客様の真実のニーズからかけ離れたところに制度があるのであれば、
残念ながら会計参与は忘れられた存在となる運命でしょう。