紛議調停制度とは、税理士が業務を行うにあたってお客様との間で生じた争いごと、あるいは税理士同士の間で生じた争いごとを、裁判等の法的手続きに拠らず、各地の税理士会が運営する紛議調停委員会にかけて和解を斡旋しようという制度です。
これは平成13年の税理士法改正において創設された制度であり、裁判外紛争解決手続き(ADR)の一種と考えられます。
調停が成立した場合は民法上の和解としての効力も有することになります。
当初は申立て件数自体少なく、従って調停の成立件数も少なかったようですが、徐々に件数が増加して税理士の間でも注目される手続きとなりつつあります。
近年の消費者意識向上、あるいは経済状況の悪化により、従来では考えられなかったほどお客様(税理士業界ではクライアント、顧問先、関与先などと呼びます)が税理士に向ける視線は厳しいものになりつつあります。
最近は少し落ち着いたようですが、税理士に対するお客様からの損害賠償請求の増加もその表れと言えるでしょう。
このような税理士とお客様とのトラブルを防止するためにはまず何よりも税理士が十分な説明責任を果たすことが求められます。
これまでのように「我々専門家に任せておきなさい」という態度、オールドタイプの税理士では通用しない時代になりつつあるということです。
税理士とお客様との間にトラブルを発生させないということが何より大切ではありますが、もしトラブルが発生した場合にいきなり裁判等の法的手続きに進むのではなく、まず同業である税理士が両者の意見を聞いて和解の可能性を探るということは非常に意義のあることだと考えます。
近畿税理士会では紛議調停委員会として活動する税理士が10数名程度で、年間30件前後の申立てに対応しているようです。
業務の性質上あるいは紛議調停規則上、なかなか具体的な事例を公表することは困難かもしれませんが、規則に抵触しない範囲で我々に参考となるべき点をまとめることはできないものでしょうか。
そうすれば紛議調停制度の認知度をより高め発展させるとともに、有効なトラブル予防策となりえるはずです。