平成21年度税制改正について

この数年間、与野党伯仲の政治状況を反映して、税制改正は比較的小規模の内容が続きました。

税理士は皆、春から夏にかけて税制改正の中身を精査し、事務所内で勉強会を行い、実際の業務においてどのような影響があるか検討するなど大きく時間を割かれるわけですが、この数年は税理士も少しのんびりできたわけです。

 

平成21年度税制改正も小規模と言ってよい内容ですが、しかしリーマンショック以降の世界経済の急激な悪化を受けたなかでの改正であるため、異例と言えるほど減税方向の改正がずらりと並んでいます。

これらを良く理解して上手に利用すれば中小企業も手元現金を少しでも積み増すことが可能です。

個人的には特に、欠損金の繰戻し還付を中小企業が無制限に使えるようになったのが大きいと感じています。

増税方向の改正が多い年は税理士もお客様に説明する時に気が重いのですが、今年度の改正は税理士にとって、お客様に積極的にご案内できそうです。

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平成21年度税制改正〜事業者関連〜

★中小法人の法人税軽減税率の引下げ

「法人税は30%」、つまり利益の3割は法人税で持って行かれるということですね。

実は中小企業の場合、利益800万までは30%ではなく22%の税率で計算されていました。

これが今度の改正でさらに18%に引き下げられます。

なお中小企業(中小法人)とは原則として資本金が1億円以下の法人のことを言います。

適用時期:平成21年4月1日から平成23年3月31日までに終了する事業年度

 

★欠損金の繰戻し還付

欠損金とは簡単に言えば赤字ということです。

これまでも「欠損金の繰越し」という制度は存在しました。

これは赤字が出た翌年に利益が出た場合、その利益を前年の赤字と相殺した上で税金を計算するというものです。

欠損金の繰越しは赤字→黒字の場合に適用されますが、「欠損金の繰戻し」は黒字→赤字となった場合の制度です。

つまり利益が出て法人税を納めた翌年に赤字となった場合、前年の黒字と相殺計算して前年の法人税を計算しなおし、差額を還付してもらえます。

この制度は以前から設立5年以内の法人に限り認められていたのですが、今回の改正でその制約がなくなりました。

適用時期:平成21年2月1日以降終了事業年度から

 

★新・事業承継税制

中小企業の経営承継を円滑に行うため、「経営承継円滑化法」という法律が定められると同時に、

非上場株式に関して相続税および贈与税の納税猶予制度が定められました。

しかしこの制度は中小企業というより、資産や売上が数十億円規模の「中堅企業」が事実上の対象と言えます。

適用時期:平成20年10月1日以後の相続から

 

★法人の土地譲渡益重課の適用停止延長

ニュース等ではあまり大きく扱われませんでしたが、特に一部の不動産業者にとって重要な改正

(というよりも延長措置ですが)が、今回の税制改正に盛り込まれました。

それが法人の土地譲渡益重課の適用停止延長です。

法人の税金は利益全体に対して一定の%を乗じて計算しますが、それとは別にその利益中に土地の譲渡による利益が含まれている場合にはその部分にだけ更に5〜10%を乗じて税金を課すという制度がありました。

しかしこの制度はバブル崩壊後に続く不動産不況の中、平成10年から適用が停止され、その停止期限は平成20年12月31日までとなっていたのです。

今回の改正議論は世界同時不況の影響を受けて日本の不動産市況も後退するなかで行われたためこの措置は無事に5年間延長されることになりました。

不動産業者を多く顧問先に持つ税理士事務所は一安心です。

適用時期:平成25年12月31日まで

 

★土地等の長期譲渡所得の特別控除

この制度は簡単に言うと「平成21年1月1日から平成22年12月31日までに土地を取得し、5年超所有したうえで売却した場合にはその売却益のうち、10百万円は税金をかけません。」

この制度は棚卸資産には適用されません。すなわち不動産業者の販売用不動産には適用されないことにご注意下さい。

 

★土地等の先行取得をした場合の課税の特例

法人が、平成21年1月1日から平成22年12月31日までの期間内に土地など(以下「先行取得土地等」といいます。)を取得し、 その取得の日を含む事業年度終了の日後10年以内にその法人の所有する他の土地等の譲渡をしたときは、その先行取得土地等について圧縮限度額の範囲内で帳簿価額を損金経理により減額するなどの一定の方法で経理したときは、その減額した金額を損金の額に算入する圧縮記帳の適用を受けることができます(国税庁タックスアンサーより)。

 

難しい内容ですが、これは「圧縮記帳」「課税の繰り延べ」と呼ばれる、一般の方には少しなじみの薄い仕組みです。

@法人、または個人事業者である。

AH21年1月1日〜H22年12月31日までに通常の売買で、販売用ではない土地を取得した。

B上記Aで挙げた土地以外にもう1件土地を保有している、又は取得する予定がある。

C上記Bで挙げた土地は今後10年以内に売却する予定がある。

以上4つの条件を満たしている場合は、上記Cの売却益の税金は大きく減額してもらえます。

(そのかわり、その後上記Aの土地を売却することがあれば、その税金は高くなる)

更にこの適用を受けるためには上記Aの土地を取得した年の確定申告で税務署に届出を行う必要があります。

こうやって書き出してみるとあらためてその難しさを感じます。

土地等の長期譲渡所得の特別控除と合わせて、平成22年12月31日までに土地を取得する場合は税理士に事前確認されるとよいでしょう。

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平成21年度税制改正〜非事業者関連〜

★住宅ローン減税

住宅ローン減税はもともと平成20年12月31日をもって打ち切りの予定でした。

しかし不動産市況の悪化を受けて、打ち切りではなく逆にこれまでよりも優遇幅を拡大して延長されます。
 
概要「平成21年1月1日から平成25年12月31日までに住宅ローンを借りて住宅を購入した人は、

年末ローン残高の1%分(長期優良住宅は1.2%分の場合あり)、所得税が減税される。」

住宅ローン減税を受けるための細かい要件は、必ず税務署や税理士事務所にご確認下さい。

ところでここ数年、住宅ローン減税は住民税との関係がかなり複雑になり、税理士も頭が混乱しています

簡単にまとめておきましょう。

 

平成11年〜平成18年入居者

住民税からの控除→あり・地方への申告→必要※1

平成19年〜平成20年入居者

住民税からの控除→なし※2・地方への申告→不要

平成21年〜平成25年入居者

住民税からの控除→あり・地方への申告→不要※3

 

※1
平成21年分(住民税は平成22年度分)より不要となる予定。
そのため源泉徴収票・給与支払報告書の様式変更が予想される。

※2
そのために控除期間が10年と15年で選択可能となっている。
所得税のみでの控除額切捨てを避けるためには15年を選択するほうが無難なケースが多い。

※3
上記※1同様、源泉徴収票・給与支払報告書の様式変更が予想される。

 

★不動産取得税の軽減税率

もう一つ、不動産絡みの改正(延長措置)で主要なものを挙げておきます。

不動産取得税は課税標準×標準税率が原則的な計算方法です。

課税標準とはすなわち不動産価格、標準税率は現在4%と定められています。

しかし不動産取引の活性化を図るため、以前からこの不動産取得税は軽減されていました。

ちなみに不動産は大きく以下の4つに区分することが可能です。

@住宅用の土地 A住宅用以外の土地 B住宅用の建物 C住宅用以外の建物

不動産取得税の軽減は以下の通り

T 上記の@Aについて課税標準を1/2として計算する。

U 上記の@ABについて、税率を3%として計算する。

この軽減が本来平成21年3月31日までの予定でしたが、改正で平成24年3月31日まで3年間延長されました。

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