最初に法人の確定申告について、業務の全体を示した進行表を掲載します。
業務の進行に応じてこの表に丸をつけていけば、今どこまで進んでいるのか
税理士事務所スタッフの誰もがすぐに把握することができます。
なお()内はその業務で使用するソフトの名称です。
地方税率・期中納税額の確認→入力開始前チェック→顧問先から申告書類等の受入その他→
必要な決算整理仕訳・申告書別表の確認→弥生会計入力の完成と元帳チェック→
申告書作成前の最終確認→消費税申告書作成(弥生会計)→消費税等整理仕訳(弥生会計)→
内訳書作成(内訳概況の達人)→法人税申告書作成(法人税の達人)→法人税等整理仕訳(弥生会計)→
事業概況書作成(弥生会計)→決算書作成(弥生会計)→帳票の印刷と最終チェック→
最終損益と税額の顧問先への連絡+納付書の郵送→提出用書類および顧問先控のセッティング
各官公署への申告書類の提出→顧問先返却書類の作成と発送→申告後処理
法人の都道府県民税と市町村民税の法人税割・均等割は自治体によりそれぞれ異なります。
例えば市町村民税は大半が法人税割12.3%、均等割50,000円(資本金1千万円以下の場合)ですが、
たとえば八尾市では法人税割が14.7%となっています。
税理士事務所スタッフは知識があるだけに逆に思い込みが怖いのですが、
再確認と表へのまとめを事務所内でルールとして決めておけば安心です。
また、前期の確定納税額・当期の予定納税額なども最初に表にまとめておくと
後で別表を作成するときにスピーディです。
府民税 → 税率(税割) 税率(均等割)×月数/12(1月未満切捨、百円未満切捨)
市民税① → 税率(税割) 税率(均等割)×月数/12(1月未満切捨、百円未満切捨)
市民税② → 税率(税割) 税率(均等割)×月数/12(1月未満切捨、百円未満切捨)
(それぞれ原則として前期の申告書控と一致しているか突合する)
(市民税②は本店所在地以外の市町村に事業所がある場合のみ)
中小零細法人の申告書を作成する場合、多くの書類作成は定型的に進めればよいのですが、
たまに注意を要する特別なケースが存在します。
書類作成に着手する前に、特別なケースに該当する項目がないかチェックしておきましょう。
この表では矢印の左側にあるのが一般的なケース、右側にあるのが特別なケースです。
経験を積んだ税理士事務所スタッフなら、特別なケースでは申告書作成時、どのような
ことに注意すればすぐにわかると思います。わからない場合は必ず所長や先輩に確認しましょう。
普通法人である ⇔ 普通法人以外の法人である
青色申告である ⇔ 白色申告である
事業年度は12ヵ月である ⇔ 12ヵ月未満(新設法人等)
消費税の計算方法は原則課税である ⇔ 簡易課税
消費税の経理方法は税抜経理である ⇔ 税込経理
前期・翌期の消費税納税義務は当期と同一である ⇔ 異なる
減価償却は年次償却・直接償却である ⇔ 月次償却・間接償却
前期に特別な申告調整はない ⇔ 特別な申告調整あり
当期に修正申告はない ⇔ 当期に修正申告あり
繰越欠損金はない ⇔ 繰越欠損金あり
繰戻還付(前期黒字+当期赤字)に該当しない ⇔ 該当する
本店所在地・取締役・資本金額の異動なし ⇔ 異動あり
株主・持ち株数の異動なし ⇔ 異動あり
支店等の開設や廃止なし ⇔ 開設や廃止あり
その他:前年度の決算整理を確認して、当期に必要な決算整理を検討しておく。
その他:税額控除や特別償却について期中の取引に該当するものがないか再確認しておく。
申告時の確認事項が多い顧問先については、前年度の申告なども参考にしながら確認事項を
早めにピックアップしておきましょう。
特にその税理士事務所で初めて申告を行う場合などは、前掲の「決算についてのご案内」
などを利用して確認もれがないように注意して下さい。
↓
各申告書類の回収とご捺印
(記帳代行先のみ)最終分会計書類の回収
期末棚卸高・仕掛工事等
収益・費用の(締め後)帳端分、未収未払分(特に現金主義の場合)
期末日通帳コピーまたは残高証明書の回収
期末日割引手形、裏書手形の残高の有無
固定資産の期中除却の有無
期末従業員数
不良債権の新規発生の有無
登記事項の変更の有無
決算書の外部への提出予定はあるか(銀行、信販、取引先、経審など)
(決算整理後の)最終損益、納税額の概算について理解されているか
役員報酬の定時定額は理解されているか、変更について検討されているか
その顧問先について、どのような決算仕訳が必要か、法人税申告書の別表は何が必要か確認します。
税理士事務所の顧問先である一般的な中小企業の場合、ここに掲げたものでほぼ網羅できていると思います。
もちろん決算仕訳については前期の決算整理の確認がまず必要です。
○決算整理仕訳
期末棚卸高の洗替、帳端・未収未払いの計上(洗替)、役員貸借の利息計上、貸倒引当金
減価償却、長期前払費用償却
○申告書別表
常に必要となる別表 → 一(一)、二、四、五(一)、五(二)、六号、二十号
所得税額控除 → 六(一)、六号四の四、九号の二
欠損金 → 七(一)、六号別表九
受取配当金 → 八(一)
特定の基金(倒産防止共済) → 十(九)
個別評価の貸倒引当金 → 十一(一)
一括評価の貸倒引当金 → 十一(一の二)
寄附金 → 十四(二)
交際費等 → 十五
減価償却・定額法 → 十六(一)
減価償却・定率法 → 十六(二)
長期前払費用(繰延資産) → 十六(六)
(30万円未満の)即時償却 → 十六(七)
(20万円未満の)一括償却 → 十六(八)
その他、必要な仕訳・別表があれば適宜記入する。
決算整理仕訳まで入力し、各勘定科目について再確認(元帳チェック)を終えたら、
申告書作成に進む前にいくつかのチェック事項があります
↓
決算整理を含むすべての仕訳が入力されたか(未払消費税、未払法人税を除く)。
前期比較で極端に変動している科目はないか。あればその原因は把握されているか。
前期の決算整理と比較して不明点はないか。
マニュアル・備忘録などの会計上処理すべき項目についてもれはないか。
赤字または繰越欠損なら消耗品費・修繕費等の資産計上や、減価償却の減額・停止を検討したか。
評価替すべき有価証券、外貨建債権債務はないか。
相殺すべき内部債権債務はないか。
課税売上割合95%未満は個別対応方式と一括比例配分方式(2年継続)を比較。
課税売上割合95%未満+税抜経理は交際費等に係る控除対象外消費税額等。
課税売上割合80%未満+税抜経理は資産に係る控除対象外消費税額等。
固定資産台帳と試算表は一致しているか。