【設例】
建物の耐震補強工事を全額修繕費で計上した。
【解説】
会社が建物の修繕や機械の修理を行った場合、その内容によって支出した年度に損金処理できる「修繕費」とするか、資産計上して一定期間で減価償却していく「資本的支出」とするかをその実態に基づき判断しなければなりません。
「修繕費」とはその資産の通常の維持管理、原状回復のための費用のことを、「資本的支出」とはその資産の使用期間を延長させたり、価値や性能を高めるための改良に支出した金額のことをいいます。
設例の「建物の耐震補強工事」についてですが、基本的には工事を施すことにより建物の使用期間が延長されたと考えられるため、資本的支出に該当します。
修繕費でも資本的支出でも、最終的には支出した全額が損金になるという点は同じですが、
資本的支出に該当する場合は減価償却で数年間に分けて損金とするため、一度に損金処理する修繕費に比べれば支出した年度の損金はかなり少額となり、単年度の節税効果は一見小さいように思えてしまいます。
税理士としてはこの点、いつもお客様へのご案内に苦労するところです。
いくら最終的な損金が同額になると言っても、中小企業はあまり将来のことより直近の節税や資金繰りが重要ですからね。
しかし修繕費と資本的支出の区分は、税務調査でもその判断について指摘が非常に多い部分です。
金額自体も大きいことが多いので、工事内容の詳細が分かる請求書などの資料や修理箇所の写真などの書類を保管し、決算申告までに税理士と十分な打ち合わせを行って下さい。
【税理士のワンポイントアドバイス】
修繕費は必ずその年に全額損金になるわけではありません。十分にご注意ください。